ADHDと事務(新卒で事務経験を積んだ当事者の、“不注意”をめぐる考察)

目次1 はじめに2 一年間のうち、だいたい8割くらいはデスクワークをやっていた3 「ADHDはデスクワークに向 […]

カテゴリー:ADHDと仕事   投稿者:   更新日:2017年4月12日


はじめに

今回の記事では、「不注意」という弱点を抱えた発達障害当事者の、事務系スタッフでの就労について考えてみます。

誰にとっても仕事は楽なものではないでしょうが、注意力に障害を抱えた当事者にとって、細やかな注意力を求められるデスクワークは特に苦手意識を持ちやすいところだと思います。

就職してから約一年という短いキャリアではありますが、私個人の経験を振り返りながら、発達障害当事者に多く見られる「不注意」という特性と、デスクワークの相性について考えていきます。

 

一年間のうち、だいたい8割くらいはデスクワークをやっていた

 

私グレースは、現在正社員になってから約一年というところですが、これまで、営業も事務もそれぞれ経験してきました。
比率としては2:8くらいで、トータルでは事務方の仕事をしていた期間の方が長いです。営業では新規のところに飛び込みのようなかたちで向かうこともありましたし、既存顧客のフォロー・新しい案件の提案という取り組みをすることもありました。

事務では、労務管理から経理財務にまたがるところまで、広く手続き業務に関わる仕事をやってきました。

 

「ADHDはデスクワークに向いていない」は本当なのか

 

ADHDというと、「注意力がない」「集中が続かない」といったような理解が広く一般的なこともあり、正確さが要求される事務処理は向かないと言われることが多いと思います。

特に経理は、その煩雑さや細かさから、ADHDに向かないと言われがちな職種だと思います。
たしかに私自身、「不注意優勢型」と診断されてしまうレベルの不注意で、注意力には全く自信がありません。

しかし、これまでやってきた事務系の仕事に関していうと、自分はむしろ、正確さ・ミスの少なさ・作業の丁寧さなどを褒められることが多く、職場の人たちには「不注意な」人だとはあまり思われてはいないと思います(仕事が遅いことを指摘された経験だったら数え切れませんが・・・。)。

こうした経験から、ADHDだからと言ってすぐさま、事務系の仕事に向いていないなどと考えることもないのではないかと現在は思っています。

 

仕事のなかでも、「不注意」はやっぱり隠し切れない

 

私は家の中ではしょっちゅう携帯電話や財布などを無くしますし、未だに傘を持って外へ出れば、二回に一回は置いて帰るので、ビニール傘以外の傘は買うことがありません。

子供の頃は、持って行った鉛筆は全て学校に落として帰る始末でした。

威張ることでもないのでしょうが、基本的にとてもルーズな性格で、自己管理も決して得意ではありません。

うっかりミスの比率であれば、人の三倍は軽く超えてしまうでしょう。

こういう意味での「不注意」は、仕事のなかでも、正直隠し切れてはいません。

繁忙期がやってきたときの机の汚さは人一倍ひどいものだと思いますし、ミスプリントの量も人の数倍はやっていると思います(シュッレッダーの前にたつ頻度が人もよりも多い。)。

 

「不注意」をカバーするために、仕事で工夫してきたこと

 

そんな私が、仕事のなかで、「不注意」という自分の弱点をカバーするためには、人一倍工夫も必要でした。

特に意識してきたことは、仕事のやり方や、人とのコミュニケーションの記録などを、なるべく詳しく言葉で残すということです。

例えば、覚えた仕事のやり方をすぐにマニュアル化するという点はもちろんのこと、上司から仕事の指示を聞くときや、会議に出るときなど、いつでもメモ帳を筆記用具を手放さないようにしています。

これは、短期記憶が弱くド忘れなどが多い自分にとっては、致命的な仕事のやり忘れ・指示の聞き漏らしなどを防止するためには必須のことでした。

また、単なる業務のやり方をマニュアルにするだけでなく、ミスをしてしまった点(もしくは、ミスをしそうな点)をまとめて、チェックリストのようなものも自作してきました。

こうした工夫によって、「記憶」や「慣れ」に頼って仕事をしている同僚らと比較しても、特にミスが目立つこともなくなっていきました。

また、重要なやりとりほど、電話や口頭での話にとどめず、なるべくメールでやりとりするようにもしてきました。いつでも読み返すことのできるメールにすることで、進捗のド忘れも減らすことができるからです。

また、メールにすることで、ccに上司などを入れ、自分一人のミスで大きなトラブルになることも防止できました。

こういう心がけを続けていくうちに、むしろ報告や相談などが人一倍しっかりできているという評価に繋がっていくことも増えるようになりました。

こうした、「不注意」を減らしていく取り組みによって、徐々に自分の「不注意」という面はあまり仕事で姿を見せることがなくなり、着実に仕事をこなしていけることが評価される場面が増えるようになりました。

 

体に刻み込まれた「不注意」と、工夫でなんとかなる「不注意」

 

こうした経験から、私が最近よく思うのは、一概に「不注意」と言っても、いろいろな意味の「不注意」があるということです。

例えば私は気が散りやすく、人の話し声、電話の音などで、すぐに気が散ります。大きな音が突然鳴ると、頭の中が真っ白になってしまうこともよくあります。

こういう意味での「不注意」は、言ってみれば体が勝手に反応してしまうものなので、もはやなくすことは難しいと思います。

しかし、上記のような、体に刻み込まれた「不注意」があるからと言って、必ずしも、注意力が求められる仕事が一切できないわけではありません。

むしろ仕事の中で求められる注意力は、「必要な報告を怠らない注意力」や、「過去の失敗を次に活かす注意力」や、「わからないことはそのままにしない注意力」といったような、「些細なことにまで”注意”を向けて、工夫する力」であることが多いような気がします。

 

ミスをしないための工夫よりも、ミスをした時にすぐに修正できる仕組みを作る方が楽

 

ひとえに不注意といっても、「体に刻まれた不注意」と、「工夫次第でなんとかなる不注意」と二種類あると思います。

前者については、もはや体ごと取り替えでもしない限り、なくすことはできないと思うので、仕事のなかでもミスそのものは消すことができません。

むしろ、ミスそのものをなくそうとするのではなく、ミスをしたときに自分ですぐに気がつくための仕組みを工夫して作る方が、不注意優勢型の当事者にとっては建設的なのだろうと思います。

逆にいまでも苦労するのは?

しかし、努力によってある程度解決できた問題もあれば、未解決のままとなっている問題もあります。私が、まだ満足のいく解決策を見つけきれていない問題には、たとえば以下のようなものがあります。

始業時間が定められていることが苦痛

私は、コンサータという処方薬を毎朝服用しています。しかし、コンサータを服用するのは、朝食をとった後の時間のため、朝起きるときだけは、薬の力をかりることができません。そのため、むしろ朝起床してから出勤するまでの時間帯が、仕事そのものよりも大きな負担とはなっています。

始業の時間が定められている職場で、定刻までに毎日出勤しなければならないというプレッシャーは朝起きるのが苦手な人にとっては、非常に大きな負担になる場合があると思います。しかし、そもそも事務系の職種で雇用される場合には、業務内容についてそこまで大きな裁量権を持っている場合は多くないため、勤務時間を自分も思い通りにすることは難しい場合が多いと考えられます。

この点は、薬物療法によるセルフマネジメントが特に困難な点として、実際に就労を経験する前に、事前に自分の適性をよく検討しておく必要があるでしょう。

黙って人の話を聞いていることが苦痛

これも、多動などの症状を持っている当事者の方にはありがちなことだと思われますが、自分に発言の機会が与えられていない会議の場で黙って人の話を聞いていることも非常に苦痛に感じられます。会社という大きな組織のなかでは、「メンバーの一員として、一応その場にはいないといけない」とか「何を話し合っているのかさっぱりわからないが、とりあえず真面目に聞く姿勢くらいは見せないといけない」という場面がたびたびあります。

目的がよくわからないうえ、口頭で長い話を聞くことが苦手な自分にとっては、これも非常に苦痛なことです。

こういう状況で苦痛を和らげる工夫などとしては、特に意味がなくてもメモ帳と筆記用具を持ち歩き、会議と関係がありそうなことをメモするといったこともしています。たとえ後で見返す予定などがまったくなかったとしても、手を動かしてさえいれば、退屈な会議でも、思考が拡散しにくくなるからです。

しかし上司から、「本当に話を聞いているのか」とか、「ボケッとして見える」とか、憎まれ口を叩かれた経験は数知れず、いまでも決定的な解決策は見つけられない状況にあるといえます。

結局、ADHDに事務系の仕事は向いているのか?

発達障害の当事者にとって苦手であると言われがちな事務の仕事も、努力次第では克服できることもたくさんあります。しかし、努力によっても十分に解決するのが難しい課題もたくさんあるように思います。そもそも工夫や努力でどうしようもない症状をかかえているからこそ「障害」なのだということを考えれば、なにかしらの課題が残ることは、もはや諦めるしかないのかもしれません。

事務系スタッフの仕事は、定型的な業務が多く、「普通の人であれば誰でもできる仕事を、普通通りにやっていけばよい」という面が、特に若手や新人のうちほど顕著だと考えられます。そのため発達障害の当事者のように、得手不得手の落差が大きいタイプの人にとっては、自分の長所を存分に発揮する機会に恵まれにくいわりに、短所がアラとして目立ってしまう場面も多くなりがちだと予想されます。

障害の有無にかかわらず、また業界や業種にかかわらず、組織に属して仕事をする際には、周囲に合わせた働き方を各人が見つけていくことは必要になるので、「得意な部分を生かして苦手な部分を補う」ということと、「苦手な部分を、致命傷にならない程度までになんとか底上げしていく」ということの両面から、自分の適性をのばしていきましょう。

 

まとめ

以上、自分の「不注意」という短所を仕事のなかで補うために、私が言葉を用いてやってきた工夫と、ADHD当事者の事務職の適性について考察させていただきました。

私の場合は言語性IQの方がかなり優位な当事者だったために、言葉を用いた工夫が各種工夫が功を奏した可能性はあり、もしかしたら万人にお勧めできるノウハウではないかもしれません。

自分の得意なことを生かしながら、苦手を補うための工夫の一例として、一つのご参考としてもらえればと思います。

 が書いた記事です

ADHD(不注意優勢型)とASDの診断を約一年ほど前にいただいた発達障害当事者です。新卒入社後に仕事でつまずき、間も無く診断された新米社会人。自分のキャリアについて模索(迷走ともいう)する日々を記事にしています。

twitter:https://twitter.com/grace_adhd

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